第1章 目撃者

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「さ……猿渡……か……」 ゲーセンの入り口で突っ立っていた猿渡を、矢木は顔を真っ赤にし、動揺を露わに見つめる。 「矢木さん……」 「あ……俺、ちょっと頭冷やしてくるわ」 「狼煙間さんと……喧嘩でもしたんですか」 「ん……そんなとこだ……」 矢木は言葉を濁し、早足で去って行った。猿渡は迷った末、矢木の後を追う。 「矢木さん!」 「……付いてこなくていいぞ」 矢木は若干迷惑そうに猿渡を振り返り、猿渡が立ち止まりそうにないのを見て取ると、やがて、仕方ない、と歩調を落とす。 「あの……今……」 「!」 猿渡が声をかけると、矢木はあからさまに顔を強張らせ、猿渡を凝視する。 「……な、何だ?」 「……何でもないです」 「……そっか」 矢木はほっとしたように前に視線を戻し、息を付く。 「「……」」 二人は黙ってしばらく一緒に歩き、やがてゲーセンに戻った。
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