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「さ……猿渡……か……」
ゲーセンの入り口で突っ立っていた猿渡を、矢木は顔を真っ赤にし、動揺を露わに見つめる。
「矢木さん……」
「あ……俺、ちょっと頭冷やしてくるわ」
「狼煙間さんと……喧嘩でもしたんですか」
「ん……そんなとこだ……」
矢木は言葉を濁し、早足で去って行った。猿渡は迷った末、矢木の後を追う。
「矢木さん!」
「……付いてこなくていいぞ」
矢木は若干迷惑そうに猿渡を振り返り、猿渡が立ち止まりそうにないのを見て取ると、やがて、仕方ない、と歩調を落とす。
「あの……今……」
「!」
猿渡が声をかけると、矢木はあからさまに顔を強張らせ、猿渡を凝視する。
「……な、何だ?」
「……何でもないです」
「……そっか」
矢木はほっとしたように前に視線を戻し、息を付く。
「「……」」
二人は黙ってしばらく一緒に歩き、やがてゲーセンに戻った。
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