第1章 目撃者

5/9
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「あれ? どこ行ってたんスか?」 犬井はあの後遅れてゲーセンに来ていたようで、わびのつもりなのか、狼煙間に自販機のアイスを奢りながら、矢木にもアイスを差し出す。矢木は苦笑して呟いた。 「いいわ。自分で食えよ」 「う~す!」 犬井はそのアイスを頬張りながら、上機嫌だ。 「……狼煙間」  矢木はちらりと狼煙間を見て、狼煙間は恨めしそうに矢木を睨んだ。矢木はそそくさと視線を逸らし、猿渡に笑いかける。 「あ、さ、猿渡もアイス食うか。奢るぞ」 「あっ! ずるいっスよ矢木さん!」  犬井は、猿渡だけ矢木にアイスを奢ってもらうのが悔しかったのか、不満げな声を上げた。 「じゃあ、犬井にも奢るって。でも2個も食うのか?」  矢木は少し呆れたように眉を上げたが、犬井は得意げに頷いた。 「全然食えますよ!」  その間、狼煙間がじっと矢木を睨んでいたのを、猿渡は神妙に見つめていた。 結局その日は、何事もなかったかのように予定通りの遠征をこなし、解散した。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!