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「……なんかあったんか」
「お、俺ですか? ……いや、何も……」
「ちゃんと、話しといた方が楽になるぞ」
気遣って優しい言葉をかけてくる矢木に、それは貴方の方ですよ、と猿渡は心の中で呟き返した。こうなったら、それとなくさっきのことを臭わせて、情報を引き出してみようか。
「矢木さん……最近何か嫌なことなかったですか?」
猿渡は突然話題を変え、矢木に尋ねる。
「嫌な事?」
矢木は目をしばたかせ、猿渡を見つめた。
「誰かに、こう……嫌なことされてる、とか」
「お前、誰かに何かされてんの?」
矢木は怪訝そうに尋ね返す。
「お、俺じゃなくて、矢木さんが……」
猿渡は、ゲーセンで狼煙間に抵抗していた矢木を思い出し、眉を寄せる。
「力づくで……その、いやなことされたり……させられたり……。でも、相手によっては、人に言えない事って、あるじゃないですか……」
猿渡が言いにくそうにぽつぽつと話すと、矢木の顔が段々険しくなった。
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