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「……猿渡さ」
「はい?」
「誰だよ? そいつ。お前にそんな事してる奴がいるなら、俺がシメてやるからよ。言えよ」
矢木は、静かに怒り、猿渡を見つめている。
「仲間に手ぇ出す奴は、どんな奴でも許さねぇ。俺が絶対仇取ってやる」
「……俺も、同じ気持ちです」
猿渡は、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちで、まっすぐに自分を見つめてくる矢木から視線を逸らした。
(俺は矢木さんを助けたいんですよ……)
しかし、矢木は猿渡には言う気はないらしい。それもそうだ。同性の親友に力づくで迫られているなんて、誰に相談できるだろうか。まして、猿渡は矢木から見れば後輩で、一番弱みを見せたくない相手のはずだ。
(……こうなったら、俺だけで解決します)
猿渡は決意を胸に拳を握りしめ、矢木は黙り込んだ猿渡の横顔を、気遣うように見つめていた。
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