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にこにこ微笑んでいる虎太郎さんはともかく、市ヶ谷部長とはプライベートな付き合いがほとんどなかったので、どのくらい感情を出していいかわからなかった。
好きな上司だったのだ。虎太郎さんになにか謀られたのだとしても、迷惑をかけるわけにはいかない。
いやいやでも歩を進めたわたしに安心してか、店員さんはドアを閉めて行ってしまった。
「……どういうことですか」
「僕が頼んだんだ。市ヶ谷さんは悪くないよ」
市ヶ谷部長への質問に、虎太郎さんが答える。
悪くないとかばうからには、これが謀りごとだということは自覚があるのだろう。
席に着くなんて、従うみたいでいやだと思った。
だからわたしはその場で動かないことを選んだ。
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