赤い靴

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 正門前にはもう車が着いていた。運転手さんがわざわざ出てこようとする前に、ノイマンさんは僕にドアを開けさせた。 「ありがとう、悟。お礼に今度家に招待するわ。一緒にランチでも食べましょ」 「あ、うん……ありがとう。ノイマンさんも、気を付けて……」  何だか会話になっていない返事をすると、彼女はくすっと笑って、どこか悪戯っぽい目で僕を見た。 「アリスよ」 「え」 「アリスでいいわ、悟」  バイバイ、と手を振ってドアを閉め、アリスは窓越しに可愛らしくウインクした。  滑るように走り出した車をぽかんと見送る僕の顔は、なぜか少し火照っているようだった。
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