赤い靴

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 ほんの僅かに見開いた目で、ノイマンさんが僕を見た。僕もそのはっとするほど綺麗な蒼い目を見つめ返した。  どちらも何も言わず、ただ時間だけが過ぎる。激しい雨音に包まれて、この世界には僕達二人しかいなくなったんじゃないか、という変な錯覚に襲われる。 「……あ、来たわ」  ふいと視線を逸らしたノイマンさんが言った。見ると黒くて大きな車が学校に向かって走ってくるところだった。 「ねぇ、あなた」 「え」 「名前は何ていうの?」 「……中原悟」 「悟、正門までエスコートしてちょうだい」 「え? う、うん……」  よく意味もわからず頷いた。とにかく正門まで連れていけばいいんだろう。
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