初めてのお客様 安西理彩様

8/28
前へ
/147ページ
次へ
「ん、んーー痛!!」  腕を伸ばそうとした時、思いっきり何かに手をぶつけた。その痛みで目が覚めると、理彩はゆっくりと体を起こした。  えっと……なんでソファに寝てるんだ? 確か昨日はえりこの結婚式で……!! 「あ、起きられました?」 「あ、あの!! 私……」  謝るのが先か、お礼が先か慌てていると、ぐうっと理彩のお腹が鳴った。それを聞いてクスッと笑うと、かなえは言った。 「良ければスープ、飲んでいきますか?」   ああ、恥ずかしい……。初めてのお店でいくら気持ちが弱っていたからって、酔って寝るなんて。しかも結構愚痴ってしまったような気がする……。 「どうぞ。冷めないうちに」 「ありがとうございます。あの、昨日は……すみませんでした」 「何がですか?」  不思議そうな顔でそう言われ、思わず何でもないと理彩は答えた。  迷惑、だったはずなのに。客だから迷惑でもそんなこと言えないか。でもこの人……初めて会った時から思ってたけど、雰囲気がすごく柔らかくて、笑顔が優しすぎて……何でも受け止めてくれるような。  じっと見つめる理彩の視線に気付くと、かなえはにこりと微笑んだ。  裏表がないような、そんな気がする。って、会ったばかりなんだけどね。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加