初めてのお客様 安西理彩様

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 へぇ……あ、だから気まぐれ?食べ物はそんなに今はいらないけど、見てると食べたくなる。グラタンにパスタ、和食もあるんだ。あ、お酒も置いてある。 「すみません、お酒だけでもいいですか?」 「はい。大丈夫ですよ」 「じゃあ、ホワイト・レディをお願いします」 「はい」  この店は喫茶店のような雰囲気だから、てっきり紅茶や珈琲しかないと思っていたけど、お酒があるなんてありがたい。  披露宴ではお酒を飲まなかった。いろんな感情が押し寄せている今日だから、どんな自分が現れるか分からなかった。だから絶対に飲まないと決めていた。  でも、もう帰るだけだもんね。飲まなきゃ親の嫌みに耐えられる自信がない。 「どうぞ」  突然聞こえた男性の声に顔を上げると、いつから居たのか170cmはあるだろう男性がカウンターの中に立っていた。 「どうも……」  なるほどね、さっきの女の人とお酒って違和感があったのよね。あのふわふわした感じは、ケーキとかそういうイメージだもの。お酒はこの人が担当なんだわ。  理彩は目の前に置かれたグラスを見つめた。その名の通り、真っ白なカクテルだ。理彩は嫌なことがあるとよくこのお酒を頼んだ。まるでこの白が自分の中にある真っ黒な感情を消してくれる、そんな気分になるからだ。  ホワイト・レディ……今の気分はブラックレディだけどね。  ぐいっと一気に飲み干すと、口の中にさわやかな清涼感が広がっていく。もう一杯と男性にグラスを渡す。
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