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「今日、結婚式だったんですか?」
「え?」
にこにこと優しい笑顔でかなえが話しかけてきた。おそらくこの服装と紙袋から察したのだと分かり頷いた。
「今日晴れて良かったですね」
「ええ、すごく素敵な式でした……」
俯く視線に気付き、かなえは二杯目を差し出した男性に視線を向ける。入り口の方へと指を指すと、男性は静かにカウンターを離れた。
「お友達のですか?」
「はい。高校からの親友の……」
「それはおめでたいですね。親友の結婚式は、感動も大きいでしょうね」
おめでたい、本当……喜ばしいことなんだよね。えりこが結婚して嬉しい、でも……。
気付けばテーブルにポタポタと涙が落ちていた。
「あ、すみ……ません。いきなり……」
理彩の言葉にかなえはティッシュケースを差し出した。顔を見ればあの優しい笑顔で微笑んでいた。
「私のお店、涙OKなんです。だから我慢せず、どんどん泣いてください。泣くのは心と体に良いんですよ?」
「心と……体に良いって……」
そんなこと初めて聞いたよ。それに……涙OKってそんなお店も初めて……。泣いていいなんて言われたら……本当に止まらなくなっちゃう。せっかく我慢してたのに……。
気付けば五杯目のおかわりを飲み干した頃、涙でぐちゃぐちゃになった顔で理彩は話をしていた。
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