5人が本棚に入れています
本棚に追加
梅雨入りして一週間。
今日も雨だ。
3限目が休講となり、こまちゃんとランチの待ち合わせをしていた私は校門の脇の木の下にいた。どしゃ降りというほどではないが、ここなら、少しは雨をしのげる。
私は傘を畳んだ。
その時、ふと、名前を呼ばれた気がして、
周囲を見渡した。既に授業が始まった時間帯、人影はない。
あるのは、木の脇の小さな水溜まりだけ。
祖母の言葉が蘇る。
雨の日に水溜まりを見つけても、
決して覗き込んではいけないよ。
向こうの世界に連れていかれてしまうからね。
なのに。
私は水溜まりに引き寄せられるように
ふらふらと歩き出す。
傘が手を離れてぱさっと音を立てるのが遠くに聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!