出会い

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出会い

「あぁ、やっと会えた」 優しい声が聞こえた。 高く、子供のような声。 気づくと、小さな女の子に、私は抱き締められていた。 少し固い服の感触。い草の香り。 呆けている私に、少女は訝しげに首をかしげた。 「どうしたのじゃ?真紀」 どうしたのはこちらの台詞である。 目の前にいたのはなかなかの美少女だった。 色白な顔、紅を引いた唇は艶々していて、目鼻立ちはくっきりとしている。 でも、服装はまるで平安時代のような格好だ。なんだっけ?十二単? 黒髪は座っているとは言え、床まで伸び、濡れ羽色の艶々さ。 けれど、何より驚くべきは、そのおでこに、小さな角が生えていたことだ。 「鬼?」 「そうよ? おや、弥生からなにも聞いておらぬのか?」 弥生は祖母の名前だ。私がふるふると首を振ると、少女は微笑んだ。見た目に似合わず、あまりにも妖艶に。 「ここは水鬼の国。 そなたたちの世界とは水で繋がっておる。 そなたは、年頃になったら、ここに、わらわに会いに来る約束になっておったのよ」
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