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少女は霞、かすみと名乗った。
この世界は、私たち人間が言う「世界」と、水と鏡で繋がっているのだと言う。
今回、私が現れたのも、霞の部屋にある鏡からだった。
かつて、私の祖母弥生は、この世界に滞在した。その時も霞の部屋に突然現れて、それはそれは驚いたと言う。
霞と祖母は親しくなり、すぐに友人となった。
しかし、当時、水鬼の国は戦乱期。
霞はやむなく、呪い師を呼び、祖母を元の世界へと返した。
その時、彼女たちは約束したのだと言う。
自分がもし無理でも、今度は子孫たちで再会し、交遊を深めようと。
人間と鬼の寿命はもちろん違う。
霞は当時の霞のままだが、人間の祖母は亡くなり、孫の私が来ることになったわけだ。
祖母が亡くなったことを伝えると、
霞は静かに涙した。
鬼とは言っても、その少女に、私は全く危険を感じなかった。角と服装の違いさえなければ、小学生くらいの可愛らしい少女だ。ときおり、見た目に反する大人っぽい表情やしゃべり方だけが、彼女の本当の生きた年数を物語っているように感じた。
では、祖母はなぜ、水溜まりの向こう側へ行ってはいけないと言い聞かせたのだろう?
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