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夕食時になり、部屋には食事が並んだ。
板張りの上に、小さな畳が並び、その上にお膳が据えられている。
一つ一つのお膳に据えられた食事は少ないが、どれも美味しそうだ。
「さあ、真紀、遠慮せずお食べ」
「いただきます!」
私がそう言って、食事に手をつけようとした時、外が騒がしくなった。
「フミヤ様だ!」
霞は食事もそのままに、玄関なのだろう、部屋の外へと走っていった。
ここは自分も挨拶にいった方がいいのだろうか、それともここで待つのか。
私が迷っているうちに、慌ただしい足音が近づいてきた。
「食事に手をつけるな!」
まさに平安貴族といった格好の青年が踏み込んできた。ただし、角がなくても、鬼の形相だ。
「フミヤ様、お待ちになってくださいまし。
これは私の友人で」
「あなたはわかっていらっしゃるのですか?また、人間を引き込んで!」
何やら、言い争いが始まる。
どうも、ご主人には歓迎されていないらしい。
でも、フミヤ様とやらの話を聞いていると、ムカムカしてきた。
自分のいない間に勝手な真似をされては困る?
食事など出して、どうするつもりだ?
自分は仕事にかまけて、奥さんほったらかしの癖に、何様のつもりよ!!
「ちょっとよろしいですか」
私がすくっと立ち上がり、突然大きな声を出したので、二人は言い争いをやめ、黙ってこちらを見た。注目されると緊張するが、ここまで来たら言ってやる。
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