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試合はクライマックスで、差し迫り緊迫した場面でテレビ画面にテロップが流れる。
「一部の地域を除いて放送を引き続き、だって。
こんないい場面で放送終わっちゃう所があるんだな。可哀相と思わないか?アキラ」
怜がこぶしを握り締めたまま明の方を振り向いた、瞬間
―プツン―
いきなりCMが始まった。二人とも無言でテレビ画面に釘付けになる。
暫く経っても全く試合の続きが始まる気配も無く、ローカルニュースが始まった。
「……一部の地域ってココ?!最悪、信じらんねーーーーっ!」
怜は叫びながらソファを殴りつけた。
「まぁまぁ。後でスポーツニュース見りゃいいだろ」
「そういう問題じゃないよ」
機嫌の直らない怜が右手を挙げ、宥める明を後ろ手で殴る。
八つ当たりされている明が怜の腕を掴んで止めた。
中継を観ていた時とは打って変わって脱力した、いつものローテンションに戻った怜は、振り向かずテレビを見たまま掴まれた腕を振って
目に入らないテレビを二人で見ながら、だらだらとじゃれだした。
何も喋らず、顔も合わせないまま、腕が触れ合って、指が絡んで
手を繋ぎ合った瞬間、それが合図のように
明が雪崩れ込むようにソファから身を落とし、怜に圧し掛かる。
怜は脱力したままその身を受け止めた。
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