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床に組み敷かれるのは何度目なんだろう。
怜はフローリングの冷たい心地よさを肌で感じながら
されるがままになっていた。
――初体験の時、怜の身体は翌日一日言う事をきかなかった。
軋む関節,どうしようもない倦怠感。
未知の世界だった事への精神的衝撃……けれど大きな痛みは残らなかった。疵も無かった。
その事実は、初めての怜にも判った。
余裕が無い中に細心の注意を払ってくれた明。
明の優しさは痛いほど感じたけれど、一日ベッドに身を沈めながら
怜はもう未来永劫再びセックスをする事は無いと思った。
だけど、週が変わった頃
再び身体を重ねていた。拒むことなく。
喉元過ぎれば熱さ忘れる――
行為の後、相変わらず心配そうな明の表情を見ながら
薄れゆく意識の中で怜は自分を揶揄し、笑った。
この夏休み、熱さが喉元を過ぎる暇が無い間合いで、二人は身体を繋げている。
普段は以前と少しも変わらない関係。
色気のかけらも無いやりとり。ふざけ合って、冗談を言い合って。
だけど突然、なんとなく、事が始まる。
今日と同じ様に無言で、「しよう」という言葉を交わすわけでもなく
恋愛マニュアル本の順序の様に、ムード作りから始まりキスに入る訳でなく。
朝でも昼でも家の中何処でも。
言葉では説明できない理解できない事ってあるんだろうと怜は知った。
ただ、明の指が触れただけでも気持ちが伝わって来る。
熱い。
鈍い熱さが皮膚から伝わり、明の想いが血流と一緒に身体中に巡る。そんな感じ。
明は不安そうながらも、怜に行為について問い掛けては来なかった。
多分同じ様に伝わっているんだろうと思う。触れた皮膚の同じ熱さが。
勘だけだけれど。
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