36人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は何?」
「そうめん」
「マジ?何年ぶりだろ」
怜が半身を起こしてキッチンを見る。
「レイ、そうめん好きなんだ?」
「すっごい好きって訳じゃないけど、好きだよ。最近食べた記憶無いし嬉しい」
「そうか、良かった。俺も結構好きなんだ」
明は沸騰した鍋に、片手で器用に束ねている紙を切りながら、素麺を入れて行く。
「なんか季節感じる食いもんて、良くないか?」
「んだよ、ジジ臭い事言って」
眼鏡を曇らせながら振り向いた明の言葉に、怜は小馬鹿にした口調で笑った。
「ジジ臭くても美味いもん食えたら結構。そういや俺、素麺今年”初もん”だ」
「初もんって……18が普通言う?」
明の減らず口に怜は少し笑いながら、窓の外を眺める。
空の色が鮮やかで、心なしか熱を帯びている。
怜は無意識に笑みを零した。
――季節の中で好だった夏が来る。
最初のコメントを投稿しよう!