大量の事務処理

3/5
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 ピコピコッ!  望のモニターで音が鳴ると同時に文字が表示される。 ーー今年の受験に合格しますように 「残り2ヶ月もっと勉強したら考えてもいい。差し戻し!」  望はそう言ってキーボードの「差戻」キーを押す。するとこの願いごとは画面から消えた。  ピコピコッ  今度は叶のモニターで音が鳴る。 ーー家族みんなで幸せな1年を過ごせますように 「部署が違いますね。送付!」  叶はそう言うと「送付」キーを押し、マウスで送付先を「家内安全課」と選択し、クリックする。 ピコピコッ 今度は同時に2台のモニターの音が鳴った。望も叶も同時にモニターに見入る。 ーー宝くじで1億円…… ーー競馬で万馬券を…… 「はいはい」 「願うだけならタダですからね」  望と叶はこれらの願いを見た瞬間それぞれそう言って、同時に「却下」をクリックした。 「このクソ忙しい時にこんな願い持ってくるなよ!」 「『勤勉』を是とする蛍雪神社に『一攫千金』の願いですか。聞いて呆れますね」  毎年のこととはいえど、大量の願いごとの決済を求められるこの日はどうしても末端の窓口にいる者は気が立ってしまうものだ。気が立った望のもとに更に新着の願いごとが届く。 ーーええとォ、私の好きぴがァ、かれぴになって…………  カタンッ!  願いごとの途中で望は「却下」のキーを勢いよく叩く。 「うぜぇ」  望はそう吐き捨てた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!