大量の事務処理

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「しかし、普段はこいつら、俺たちには無関心なくせになぁ……みんな行くから私も行こう、っていう大衆迎合主義が見え見えなんだよ」  望はコーヒーカップを持ちながらそう言う。しかし叶は首を横に振った。 「いや、それは違いますよ。彼らは本当は皆私たち八百万の神を信じています。でも日常に忙殺されるとどうしても信仰と行動は結びつかなくなってしまう。正月は彼らにとってその2つを結びつける大切な機会なんです」 「そういうことなのかなぁ……」  望が釈然としない表情でそう言ったそのとき、鳥居を2人の子供がくぐってくるのがモニター画面から見えた。見る限り小学校高学年と低学年の兄妹だろうと思われる。 「あ、いつもの子供達だ」 「知っているんですか?」  叶が望に尋ねると、望は頷いた。 「あぁ。俺、何度も何度も願いごと聞いたことあるんだよ。毎回健康祈願課に回付してるけどな」 「健康祈願課?どこか具合でも悪いのか?」 「いや、彼らじゃないよ。彼らの……お母さんだ」  望は困った表情で兄妹の姿を再び見つめた。
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