◆ドラゴンの谷

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◆ドラゴンの谷

◆ドラゴンの谷 お腹が満たされ、足取りも軽やかにどんどん進む。 遺跡を抜け、長い坂を下りきると目の前に二つの岩山が現れ、行く手を阻む。 岩山自体は、そんなに大きくないが、嫌な気配が漂っている。 もしかしたら獣人が待ち伏せをしているかも知れない。 シルフは頼りになりそうだが、なんといっても獣人は数が多かったし、シルフの戦闘力も今時点では計り知れない。 そろそろ赤い星の光も弱くなって山影に沈みそうなので、今日はここで野宿することにする。 近くにあった大きな木に上り、何本かの枝を寄せ蔦つたで縛り留め、簡単な寝床を拵こしらえた。 これなら、ある程度は安心して眠ることができるだろう。 赤い星が完全に岩山に隠れてから、小一時間が過ぎると辺りは真っ暗闇になった。 夜になると風が強くなる。 青い星はまだ昇って来ない。 木の上の寝床は、なかなか快適だった。  仰向けに寝ているので、星々が目の前に迫って見える。 今夜は流星群にでもあたっているのか、流れ星も多く飛んで見える。 ほんとうに美しい星空だ。 壮大な星空を満喫していると突然、頭上を黒い大きな影がビュンと横切った。 それは、まさしく翼が特徴的なドラゴンの影だった。 まずいな、此処は上から丸見えじゃないか。 ドラゴンがこっちに気づけば、まるで祭壇の上にご馳走が乗っているように見えることだろう。 せっかく作った寝床だが、ドラゴンがまた戻って来ないか木の幹にへばりつき、隠れながらじっと見極める。 ドラゴンはその後、上空を2度ほど旋回して岩山の方へ飛んでいった。 慎重に寝床まで戻り、念のため体の上に大きな葉や小枝をかけて、カモフラージュする。 シルフは、あたしのお腹の上に乗って寝ると自分の体にフキの葉を1枚かけた。 シルフは寝つきが良くあっという間に寝てしまったが、あたしは今日の出来事が頭に浮かんでなかなか眠ることができない。 シルフは寝言を何度も言ったが、もともと言葉自体が歌のように聞こえるので、それを聞き自分も心地良くなっていつの間にか眠りに落ちた。
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