219人が本棚に入れています
本棚に追加
突然、腕に刺すような痛みを感じ、そこに目を向けると何か小さなものが動いている。
草がカサカサと揺れ流れて、その先に小さな光が見えた。
反射的にそのあとを追いかける。
その移動する小さな光は、あまり速くはなく、10メートルも走らないうちに追いついた。
利き腕を伸ばし、すくいとるようにそれを捕まえる。
自分に捕まって手の中で震えるそれを間近でよく見れば、小さな妖精のような生き物であった。
まだ手にしている小さな槍のような物で、こちらを突こうともがいている。
その様が少し滑稽に思えて、クスクス笑ってしまう。
しばらくして、こちらが危害を加える様子がないことが伝わったのか、それはもがくのをやめて、こちらをじっと見つめてくる。
その生き物の体温で、握った手の中が温かくなるのが分かる。
そおっと手を開き、反対側の手のひらに乗せてよく観察してみれば、とても愛らしい姿をしている。
小さな鳥が囀さえずるような声でこちらに向かって何かを懸命に話しかけてくるが、意味はまるで分からない。
それは服のようなものは身に付けていなかったので、自分が持っていたハンカチーフを体に捲いて、ピンで留めてあげた。
するとそれは、ハンカチーフの裾をもって、クルクルと嬉しそうに手のひらの中で踊ってみせた。
最初のコメントを投稿しよう!