今から帰る。

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 それから、この最悪な天候の中でも営業している、根性のあるコンビニやドラックストアをいくつか回り、十件目くらいで「でらスッパイ棒」を購入することができた。  それまでこの駄菓子を、ありふれた、どこにでもあるお菓子だと思ってたかをくくってきたが、どうしてどうして、貴重な存在だということが分かった。    店の天井まではしごがかかっており、そこから屋根の上に出た。  町の中でもひときわ高い建物である、そのスーパーは、屋根の部分がまるまる水から出ていた。  わたしはコンクリの屋根を踏みしめると、どうどうと流れてゆく悪魔のような濁流を見渡した。  買ったばかりの「でらスッパイ棒」を片手に、仁王立ちになって、この百年に一度という大惨事を眺めた。  見れば見るほどひどい有様だった。こんな中、自分はよくここまできたと思った。  凄まじい達成感である。体は疲れていたが、心は満たされていた。    気が付けば雨は小降りになっており、あんなに真っ暗で稲妻が走っていた空は、すこしずつ明るくなってきていた。    しゃっと包み紙を破ると、「でらスッパイ棒」に、むしゃっとかぶりついた。  旨かった。これこそ求めていた味だった。食べたかったものを食べることができるということは、なんという奇跡だろう。  そしてわたしは、その奇跡を自分で掴み取ったのだ。     
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