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最早誰にもわたしを止めることはできない。
「アメ子ぉっ」
「ちょっと、アメ子、待ちなさいっ」
母と姉の声が追ってきたが、構わず玄関から外に飛び出した。
アパートの二階、吹きさらしの通路には雨が吹き込んでいて飛び出した瞬間、全身ずぶ濡れになった。
ばしゃあんどしゃあんべちゃぐちゃびちびちっ。
叩きつけるような雨だ。きっと、玄関の戸を開いた瞬間に、家の中にも雨の大水が飛び込んだのに違いない。
もはや雨に全身をビンタされているようなものだった。
一瞬わたしは、玄関の中に戻ろうかと思ったが、カッと暗黒の空を走る黄金の稲妻が視界に移り、はっと我に返った。
駄目だ。絶対に駄目だ。
わたしは、「でらスッパイ棒」を買いに行くんだ。
今、たったこの今、コンビニに行って一本の「でらスッパイ棒」入手することさえできれば、この先の人生が変わる気がしていた。
行くぞ、と丹田に力を入れた時、横殴りの雨がまるで切れ目のない流れのように突っ込んできた。
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