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ウォータースライダーで水の飛沫を叩きつけられたかのようだ。目の前には水の流れが怒涛のように雪崩れ込み、足元はもはや川の中にいるような感じだ。ここは二階じゃなかったっけ、一体階下のひとはどうなったんだと、おぞましい予感が脳裏をよぎった。
しかし今は、そんなことに構っている場合ではない。
「でらスッパイ棒」を。
うおりゃあいえええい。
おたけびをあげ、腕を顔の前にクロスさせて、雪崩れ込む濁流の中に突入した。そのまま足を取られ、べちゃんどちゃんと床を転がされた。
あ、今階段に足が当たった、と思った瞬間、ごろごろばちゃんと水の流れにあおられて階段を転げ落ちた。
どしゃあと滝と一緒に外付けの階段を滑り降りると、アパートの前のアスファルトに腹ばいになっていた。
はっと振り向いたら、上から水がどばどばと降り注いできてナイアガラの滝さながらの流れが襲い掛かってくるところだった。駄目だ死ぬる。いやここで死ぬわけには。「でらスッパイ棒」を食べなくてはならない。くそったれちくしょうめ。
人生のいろいろな暗黒場面が脳裏によみがえる。
思い返せば、幼稚園の頃から自分の思いが通ったことなどなかった気がする。
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