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「アメ子ちゃん、アニメはなに見てるの」と聞かれて「オバカ戦隊パカパンマン」と答えたら、そんな下品な悪質番組を見ているなんてアメ子ちゃんいけない子、と言われた。その日から大好きだったアニメを見なくなった。姉の見ている歌謡番組を、どこがいいんだと思いながら一緒に眺めていたものだ。
好きなアイドルは誰と聞かれて、誰某だと答えたら「えー、趣味わるーいありえなーい」とみんなに笑われた。それで結局、みんなが良いと言っている芸能人を推すかたちになった。
ぜんぜん面白くなかったけれど、そうしなくてはクラスのはじかれ者になるのだから、仕方がなかった。
あああ。ううう。
なぜだろう、涙がこみあげてくる。同時にめらめらと熱いものが底から溢れて来た。
できる。否、しなくてはならない。わたしはやるのだ。
自分でも信じられない力がさく裂し、わたしは天から降り注ぎ、大地に濁流となって全てを押し流すナイアガラの滝のような雨に体を乗せ、教わったこともないバタフライで前進をしたのだった。
ばっちゃんびっちゃん、うおおおおお。
わたしが泳ぐ両脇には、ものすごい水しぶきがあがる。
もはや雨はこのあたりを全て大河に変えた。どんぶらこ。波が寄せるなか、なんだかいろいろなものが流れて来た。
誰かの自転車。
エロ本。
そのうち、くるくる回りながら、なさけない顔のおっさんが流れてきてわたしの側を通り過ぎた。
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