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「全く最悪だよ。あと少し降るの待ってくれよ」 天候に言っても仕方がないのは分かっているが文句の一つでも言いたくなる。 愚痴とも言える小言を空に向かって言っていると髪の長い女性が私と同じように走って雨を逃れて屋根の下に駆け込んできた。 私がタバコ屋さんに着いた直後だったので時間にして3分くらいだろう… 彼女も予期せぬ大雨をくらってしまったようだ。 この辺りでは見ない女性、スーツを着ていたので仕事の帰りだろうか? それとも就職活動などの帰りだろうか? 雨宿りをしていると他にやることがないので彼女の事を考えてしまっていた。 歳は私より少し上くらいでそんなに離れている感じはしなかった。 彼女は濡れたスーツの雨粒を白く細長く綺麗な手でパッパッと払った。 持っていたカバンから白いハンカチを取り出し濡れた髪に当て拭いていた。 タバコ屋さんの屋根はそこまで大きくはなく、横のスペースはひとが3人入れるかどうかの広さだ。 走ってきたばかりの彼女の息遣いが少し聞こえてくる。 気にしないように遠くの家や空を見ているつもりでもすぐ隣なので彼女の仕草が横目に入ってくる。 私はふと彼女の方に目を向けた、目を向けたと言うよりは彼女に吸い込まれると言った方が相応しい感覚である。 「もぉ」と言うような少し頬を膨らました表情で長い髪を拭く彼女は背が高くスラッとしてとてもスタイルの良い女性。 光が当たるとやや茶色く見えるが黒く艶のある綺麗な髪 の毛。失礼な言い方ではあるが雨に濡れたその姿はとても艶やかで綺麗だった。 歳が近そうとは言え、私の学校にいる同年代の女子には感じない大人の雰囲気を感じた。 スーツを着ていた事も多少なり関係あるのだろうか。 私は彼女に見とれていた。 雨の音など聞こえないくらいに彼女に目を奪われた。 そんな私の視線に気付いたのだろう彼女がハッとこちらに振り向く。 にこっと少しだけ口角を上げて優しく微笑んだ。 雨に濡れて機嫌が悪いかと思いきや、にこっと微笑む優しい表情と薄いピンク色の唇が印象的だった。
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