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あれから数年が経った。 その日も夕立ちで突然の強い雨が降っていた。 「パパぁ雨まだやまないの?今日花火見れるかなぁ?」 娘の元気な声が私に向けて投げかけられる。 「夕立ちだし大丈夫だよ。そんなに長い時間降らないだろうからそしたら出かけようね」と私は娘に言った。 「はーい」と娘は明るく元気な返事をしバタバタ駆けながら自分の部屋に戻っていく。 今日は家族で花火を見に行く約束をしていた日だ。 夕立ちで花火大会が中止とかは勘弁頂きたいものだ。 数日前から娘は 「どんな大きい花火あるのかなぁ?」 「綺麗な花火いっぱい見れるかなぁ?」 と花火大会をとても楽しみにしていた。 1時間経たないくらいだろうか、先ほどまでは土砂降りだった雨が嘘のようにやんでいる。 「ほらー雨やんだぞー!そろそろ行くぞー!」 私が言うと娘と妻が用意を済ませて玄関に駆けてくる。 「ママぁ花火楽しみだね。おっきいのいっぱい見れるかなぁ?」 妻に靴を履かせてもらいながらワクワクした声で娘が妻と話をしている。 妻は「みんなで花火見るの楽しみだね。びっくりするくらい大きな花火いっぱい見れるよ」とにこっと微笑みながら娘と話す。 近くの土手までは自宅から20分くらい歩けば着く距離だ。家族みんなで歩くともう少し時間がかかるかもしれないが、自宅を出て私と妻と娘の三人でのんびりと道を歩く。 夕立ちでできた水たまりをキャッキャッと娘が飛び跳ねて遊ぶ。 「おーい服が汚れるぞー」 私が娘に声をかけると夢中になって聞こえてないのか変わらずキャッキャッとはしゃいでいる その時、バシャッと大きく水が飛び跳ねたのが見えた。 ちょうど娘がいた郵便ポストの横の水たまりは大きなものだった。 「ママぁ髪に水が飛んだー」娘が泣き出さんばかりの大きな声で言った。 慌てて妻が娘の元へ駆けつける。 妻は娘の濡れた長い髪をあの時と同じような白いハンカチで優しく拭いている。 「気を付けてね」って彼女が言うと 「うん!ママありがと!」って娘が元気に答えた。
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