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祐希とは小学校からの付き合いだが……何を考えているのかさっぱり分からないときがある。
今だって俺は怒っているというのに、こんな風に笑いかける。
「ついじゃねえよ!」
「ごめん」
俺のほうが『つい』怒鳴ってしまう。
それでも笑って謝ってくれる祐希に、大人しく座って再び机に突っ伏した。
「謝んなよ。別にただ……
もう少し、かまえよ」
なんてことを言っているんだろう。
恥ずかしすぎて顔に熱が溜まってくるのが分かる。
「うん」
俺の我侭に対しての返事なのか、祐希は短く応えるとごわごわの髪の上に細い手を乗せた。
頭を滑っていく手の動きに撫でられているのが分かる。
ああ。なんてみっともないんだろう。
子供のような自分の態度にいまさら自己嫌悪を感じた。それでも頭の手を振り払わないのは気持ちがいいからだ。
折角こっちを見てくれた目を見返してやることもなく、刻々と時間だけが近づく。
「悟」
「う~ん」
名前を呼ばれたから返事をしたが、眠たげな声が出てしまった。
気持ちが良くてねむくなってきていたんだ。しかたない。
「明日は。晴れるよ」
知っている。
今日も朝からばっちり天気予報は確認してきた。
そう返そうと思ったが、なんだかそんな気分になれなかった。
祐希の声が優しくて、嬉しそうなのが、邪魔だといわれている気がした。
「よかったね」
撫でる手を止めずに彼女はそう呟いた。
きっと俺が思っているような邪な意味はないんだと思う。
祐希は優しいから、俺が喜ぶと思ってそう言っているんだろう。そうであって欲しいと思ってる。
雨が止めば、つまらない筋トレだけの練習から開放される。祐希はそれを良かったと言っただけだ。
もちろんそれは嬉しい。
でも雨が止めば、俺がここにいることが不自然になる。
それが嫌で……なぜか嫌で……
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