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自分が仕出かしたことにガクリと肩を落とす。
とりあえず今すぐ会社に戻って兄に事情を話し、土下座を100万回しよう。
そう決意した俺は放り投げていたスーツを手に取ると、おねーさんの横をスッと通り過ぎた。
でも、またすぐ振り向くことになる。
「律くん、待って」
こんな風に、おねーさんに呼び止められたから。
どうしたのかと首を傾げれば神妙な面持ちのおねーさんは、そのまま深く頭を下げる。
これには驚いて言葉も出ない。
「お願い、します。パーティーの準備…手伝って、ください」
絞り出すような声が静かなキッチンに響く。
どれだけ人に頼ることに慣れてないのだろうか。
辿々しいお願いの仕方が、おねーさんの不器用さを表しているようだった。
おねーさんがゆっくり頭を上げると視線が重なって、いつも覇気のない目をしているくせに、やたら真剣な眼差しを向けてくるから戸惑った。
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