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「…やっぱりお店で買えば良かった」
「大丈夫だって。こういうのは気持ちが大事なんだよ。店のなんかより何倍も兄さん喜ぶと思うけど」
「そう、かな」
「そーそー。さ、元気出してデコレーションしたら?果物と生クリーム買ってきたからさ」
「…ん」
気を取り直したおねーさんは一生懸命ケーキを作り始める。俺はポテトサラダを作ることにした。いつだったかクッキング番組で紹介されていたツリーの形のやつ。
肉じゃがの下準備のためか、シンクにはボウルに入ったジャガイモが水にさらした状態で置いてあって、それを見て思い出したんだよね。
必死なおねーさんの隣に立って鼻歌まじりにニンジンを星型に抜いていると、おねーさんがチラリとこちらに視線を向けた。
「随分ご機嫌だね。そんなに嬉しいわけ?」
「まぁね。俺も兄さんに喜んでほしいし」
「ふーん…」
弟のそんな健気な思いなんて知るはずもなく、兄の頭の中はいつだっておねーさんで埋め尽くされてるんだけどね。
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