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「もしもーし」
『りっ、律様…!』
すると、なんとも切羽詰まった様子の日下の声が電話越しに耳へと伝わった。 普段の、のほほんとしている口調と違ってかなり動揺しているのが分かる。
なんとなーく嫌な予感がして、おねーさんに聞かれないようにとルーフバルコニーに移動した。
「落ち着いて。どうしたの?」
『その…聡様がこれからお帰りになるそうなので、お車を回したのですが…』
「…?うん。それで?」
『あ、あの…何故かサンタクロースの衣装で会社から出てきまして…』
「は?」
その光景を想像してみたけど、すぐにやめた。
俺みたいなキャラだと笑って済まされるんだろうけど、会社で一番恐れられている兄がそんな格好で颯爽と歩いてるなんて…シュールだ。
『聞けば奥様へのサプライズということなのですが、かなりなりきっているようで…会話は英語ですし白髭やウィッグもお召しになられていて全く聡様の原型がないのですがこのままお送りしてもよろしいのでしょうか…?』
声を潜めているところから考えると、兄は車内にいて日下は車の外に出て話している、といった感じだろうか。
それにしても…と、大きなため息が漏れた。
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