after short story 5(律side)

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「…何か言ってよ」 「ああ…悪い。ビックリして。その格好どうしたんだ?」 「今日くらいはいいかなって思っただけ。そっちこそどうしたの?」 「俺は桃華のサンタになりたくて。どうしてもこの格好でプレゼントを渡したかったんだ」 兄は背負っていた白い袋の中から綺麗にラッピングされた長方形の箱を取り出すと、それをおねーさんに手渡した。 てっきり花がプレゼントだと思ってたのに他にもあったらしい。 「綺麗…」 箱を開けたおねーさんがポツリと一言呟く。 玄関のペンダントライトに翳すようにして眺めているのは、雪の結晶をイメージしたと思われるデザインのネックレスだった。 それはきっと、おねーさんが人生で初めて貰ったサンタさんからのプレゼント。 「付けてやるから後ろ向け」 「…うん」 兄の一言で、さっきまでこちらに背中を向けていたおねーさんがクルリと向きを変える。 そこで初めて気付いたのは、おねーさんの顔が少しだけ赤くなっていたこと。
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