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「ご飯…冷めたかもしれないから、あっため直してくる」
「分かった」
まだ赤いままの顔を隠したいのか、おねーさんは兄の方を振り向くことなく一足先にリビングに入って行く。
それまで二人の様子を覗いていた俺は、兄がサンタ仕様の黒革ブーツを脱いでいるタイミングで声を掛けることにした。
「兄さん、お疲れ」
飽く迄もさり気なく、如何にも今部屋から出てきました風に取り繕ってみる。
自分的には結構自然に演技したつもりなのに、兄は怪訝そうな表情を浮かべていた。
「なんだ律、まだいたのか。とっくに帰ったのかと思った」
「え、ヒドイ…」
俺、今日は結構頑張ったんだけどな。
このサプライズだって、俺なしでは成功しなかったと思うし。
「ご飯食べてくか?」
「ううん、二人でクリスマス楽しみなよ。おねーさん、兄さんのために一生懸命料理してたんだから」
「そうなのか?」
「うん。じゃあ俺は帰…あ、机の上にスマホ置きっ放しだった」
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