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「律…、」
「ごめんなさい、すみません。兄さんに喜んでもらいたくて調子に乗りました。でも約束通り指一本触れてないから許して?」
まくし立てるように一気に謝罪する。
兄が何か言葉を発する前に頭を下げ、息継ぎもせず謝り倒した。
ここで兄の機嫌を損ねたらせっかくのクリスマスが台無しになる。それは避けないと。
「ありがとな、律」
「はい、申し訳ござ…、へ?」
そう思っていたのに、頭上から聞こえてきた兄の声は優しくて、つい変な声が出てしまう。
「おまえのおかげで最高のクリスマスだ」
「…律くん、ありがとう」
「どう、いたしまして…」
てっきりこの世から抹消されるとばかり思っていたのに逆に感謝されるとは。しかも、おねーさんにまで。
「じゃあ…今度こそ俺は帰るよ。二人とも素敵な夜を過ごしてね。メリークリスマス」
褒められるのと同様、感謝されるのもあんまり好きじゃないから無難な言葉を掛けて帰ることにする。
帰り際、おねーさんに「プレゼントちゃんと渡すんだよ」ってコッソリ言ったのはここだけの話。
そして帰り道。
兄夫婦の幸せいっぱいなクリスマスを見届け、イルミネーションで彩られた街を歩きながら思ったのだった。
いつか結婚するのも…アリ、なのかな。
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