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この人、どう見たって仕事関係の人じゃないよね?それに付き人の日下さんもそばにいないし…てことはプライベート?
基本的に女性を毛嫌いする彼が女性と二人でいる。それってつまり…
「あの、聡さん…またお会いできますか?」
「あー…」
「お願いします。どうしても諦められないんです」
「そう言われても、」
「本気で好きなんです…!」
彼の着ているスーツの裾をキュッと掴んだ彼女は少しだけ頬を赤く染めて、堂々とそんな言葉を口にする。
これにはさすがの私もギョッとせざるを得ない。
…ちょっと待って。私は何を見せられてるの?
こんなところで修羅場とか絶対嫌なんだけど。
「私、先帰る」
「一人で歩くの禁止って言ったはずだ。すぐに日下を呼ぶからここにいろ」
「…いい。じゃあね」
「桃華!」
私を呼ぶ彼を振り返りもしない私はやっぱり冷めているのだろうか。
だけど…こんな時、どうするのが正解なのか私には分からないんだ。
学生のカップルじゃあるまいし、嫉妬したり束縛したりなんてただの恥だし。
じゃあ泣けばいい?でもそんなのバカみたい。
じゃあ怒ればいい?でも今どき不倫なんて珍しくない。
じゃあ、じゃあ…
「だから…いくら考えたって分からないってば…」
彼に出逢って少しは変われたと思ったのに。
私は未だに…彼を上手に愛せない。
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