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あれから家に帰った私達はすぐに別々のバスルームに直行して、シャワーを終えた今はソファーで肩を並べて共に淹れたてのコーヒーを啜っている。
そこで聞かされた彼女との関係は予想外のものだった。
「婚約者?」
「ああ、父が決めてきた律のな」
「そうだったんだ…」
「律はまだ結婚する気はないって言ってるんだけど、どうやら彼女の方は律のことを好きになったらしくて」
「へぇ、それでお兄ちゃんが板挟みに?」
「まぁ、そんなとこ」
彼は私が思っている何倍も面倒見が良かったこととか、
彼女との関係が…本当に何でもなかったこととか。
熱々のコーヒーを冷ます私の口元は色んな意味で綻んでいた。
「それにしても…桃華って意外と嫉妬深いんだな」
「は?子供じゃあるまいしそんなわけないでしょ」
「でもあの時すごい形相だったけど?」
「…」
黙り込む私を見て、素直じゃないな、と笑った彼は持っていたマグカップに口を付ける。
…素直じゃないなんて、私が一番分かってる。
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