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ーーーと、ここまでは良かった。
話を聞いてくれた芽衣子にも、それまで静かに見守っていてくれていた彼にも、感謝の気持ちでいっぱいで漸く肩の荷が下りた気がしていたから。
だけど、彼は何を思ったのか突然赤羽家の専属コックを数人呼びつけ、すぐに家に駆け付けたその人達に物凄い御馳走を作らせ始めた。
後から聞くと、この料理は私と芽衣子が分かり合えた記念で、美味しいものを食べて楽しく語り合えばいいという彼なりの気遣いだったらしいんだけど…
そんなこと知りもしないこの時は、どんどん机に運ばれてくる豪華な料理に私も芽衣子も開いた口が塞がらなかった。
だけど、彼の気遣いはそれだけでは終わらない。
ゆっくり話ができるようにと目を覚ました結衣ちゃんの面倒を自分が別室で見ると言い出したのだ。
いくら沢山の人間を従えている彼でも、流石に子守りなんて…
そう不安に思う私をよそに、彼は専属コックに子供用の食事を作らせ、それを上手に食べさせて。
意外にも器用に結衣ちゃんのお世話をする彼に、私も芽衣子も目を見合わせ、驚いた。
申し訳ないからと遠慮する芽衣子を有無を言わさぬお得意のオーラで捩じ伏せて、食事中だけ結衣ちゃんを見ていると言い張る彼。
その凄まじいオーラに負けた芽衣子は苦笑いをして結衣ちゃんのお世話を彼に任せた。
時間にして一時間少々。
その間に芽衣子と学生時代の話をしたり、旦那さんの愚痴を聞かされたり。
たくさん笑って、久しぶりに時間を気にせずゆっくり話すことができて私も芽衣子も大満足だった。
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