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「どうした?浮かない顔して」
「え?」
そんなことを考えていたからか、無意識の内に彼に視線を注いでいたらしい。
仕事の手を止め、ジッと私の顔を見つめる彼の瞳は全てを見透かしているようだった。
「聡…子供、好き?」
「ああ。素直で純粋で癒される」
「…私は子供なんて嫌いだよ」
「だろうな。そんな気はしてた」
ふっ、と笑った彼は再びパソコンに視線を戻すと仕事の続きを始めた。
これはきっと、これ以上この話題を続ける気は無いという合図だ。
私もできればこの話題には触れたくないからちょうどいい。
頭ではそう思うのに…
何だこれ…モヤモヤする。
「聡、」
「ん?」
「……子供、欲しい?」
「…」
「どうして黙るの?私にはいつも気持ち言わせるくせに意味分かんない」
違う…こんなことが言いたいわけじゃない。
本当は分かってるんだ。
何も言わないのは、彼なりの気遣いだってこと。
彼はきっと私の気持ちを見抜いてる。
怖くて、不安で…どうにもならない、私の気持ちを。
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