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彼と出逢うまで結婚願望がなかった私は、子供が欲しいなんて一度も思ったことがない。
子供が嫌いだから、というのはもちろんだけど…
何より自分が母親になるなんて考えられない、というのが一番の理由かもしれない。
「聡がどう考えてるのか知らないけど私は絶対母親にはなれない。子供が可哀想だから」
「可哀想?」
「…だってっ」
だって…
私は子供がどうやったら喜ぶのかなんて知らない。
泣いている子供の宥め方も知らない。
“普通”の母親と子供の形を知らない。
何も知らない。愛し方が…分からない。
そんな母親、子供が可哀想でしょ?
そう言いかけて飲み込んだのは、私の手に重ねられた彼の手が温かかったから。
私の手をギュッと握った彼は真っ直ぐに私の目を見ながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
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