2993人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
「俺は子供が欲しくて桃華と結婚したわけじゃない。おまえが今幸せならそれでいい」
「どうして…自分の気持ち押し殺してまで私の幸せを優先するの?」
彼は私が欲しかったものを全て与えてくれた。
温もりをくれて、愛してくれて…幸せをくれた。
いつだって私は貰ってばかりで彼には何一つ与えられていないのに。
「俺は何よりも一番おまえが大事なんだよ。だから桃華には笑っていてほしいだけだ」
それでも彼は真っ直ぐな瞳を向けて、そう言ってくれる。
拭いきれない恐怖心を分かってくれるみたいに優しく頭を撫でてくれる。
ほら…返しきれないくらいのものを彼は私に与えてくれるのに。
「私…聡に何もできてないね」
「そんなことはない。俺は桃華のおかげで人を大切にできるようになったから」
「人を大切に…?」
「自分に関係する人はもちろん、桃華の両親もRoadwayの人達も親友もその家族も…おまえに関係する人達全て俺にとって大切な存在なんだ。桃華に出逢えたからそういう気持ちになれた」
私だけではなく、私の大切な人達のことまでも大切に思ってくれる彼を見て思った。
もしかしたら…家族が増えるということは同時に自分にとって大切な人が今よりもっと増えることなのかもしれない、と。
最初のコメントを投稿しよう!