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「まぁいい。居酒屋行くか」
「うん、行こ行こ」
この季節はお酒が美味しく感じるけれど、外で飲むお酒はまた格別。
だから居酒屋で気兼ねなくお酒が飲めると思うと嬉しくて、浮かれ足で玄関へと向かっていた。
「待て。その前に、」
そんな私を引き止めるように、彼が後ろから私の腕を掴む。
お酒のことで頭がいっぱいになっていた私は、不機嫌オーラたっぷりに振り向いた。
「…なに」
「さっきコソコソ何を話してたんだ?」
「気になるの?」
「ああ、隠し事を許すつもりはない」
彼には背負ってるものがたくさんある。
私は私で仕事がハードで、お互い忙しい。
だから今までは、二人の時間が少ないのは仕方がないことなんだと言い聞かせて諦めていた。
でもね、今は…
昨日までの私とは大きく気持ちが変わった、今の私は。
「…聡、私達も今度一緒に海に行こうよ」
「海?」
「秋には一緒に紅葉を見に行きたい。冬には一緒にスキーしたいし、春にはお弁当持って一緒にお花見したい」
「急にどうしたんだ?」
「だって…」
だって、ね。
私達が二人で過ごせる時間をもっと大切したいって思ったんだ。
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