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「二人で一緒に色んな景色を見て、たくさん思い出を作って、それで……」
「それで?」
「それで、いつか私が母親になったら…子供に話してあげたい」
子供の頃、仲の良い家族にずっと憧れていた。
両親と仲良く手を繋いで歩く子供が羨ましくて、指を咥えながら見ていた日もある。
「桃華、さっきも言ったけど俺は別に…」
「分かってる。無理してるわけじゃないよ。まだまだ仕事したいし、もちろん今すぐには考えられないけど…いつかそうなればいいなって今日思ったんだ」
子供なんて嫌いだった私が、今日結衣ちゃんと時間を共にしたことで子供の可愛さを知った。
一つ一つの仕草が可愛くて、愛しくて…幸せで。
眠る結衣ちゃんを眺めながらウトウトしていた時、思い浮かべた未来予想図。
彼と私の間には小さな小さな家族がいて、みんなで幸せそうに笑ってた。
それは私がずっと夢見ていた光景。
お父さんがいて、お母さんがいて、子供がいて…みんなで一緒に笑い合う。
そんな家族にずっとずっと憧れ続けていた自分の気持ちに、今日まで気付かないフリしてた。
壊れてしまうのが怖かったから。
愛を知らない子供時代を送った私には無理だと諦めて、夢を見ることすらやめてしまっていたんだ。
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