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それからも兄が次々と俺を褒め称え、その度に父から優しい眼差しを向けられるという地獄のような時間を過ごした。
これなら仕事の話をしてくれていた方が良かった…と、意見したことに後悔していると。
「ところで律。例のお嬢さんとはどうなってる?」
うわ、ついに来た。一番触れてほしくなかった話題。
さて、どうやって逃げきろうか。
「えっと…、数回食事はしました」
「それで?」
「それ以外は何も。話を持ってきてくれた父さんには申し訳ないですけど、ああいうタイプの女性は好きじゃありません」
ここは逃げるよりもハッキリ言うことを選ぶことにした。“ああいうタイプの女性”とは、温室育ちのお姫様みたいな女の子のことを指している。
昔からそういうタイプの女の子にはモテてたと思う。
常に笑顔を振り撒いて優しく接してたら自然と寄ってきてたから。きっと俺が王子様にでも見えてたのかな。
でもさ、そういう女の子達を見ていつも思ってたんだよね。
ーーー馬鹿だなぁ、って。
上部だけの俺を見て、ポッと頬を赤らめてキャーキャー騒いじゃってさ。
煩いったらありゃしない。
でもうちの場合、兄が威圧感満載の愛想無しだからバランスを保つためにも俺が柔らかくいないとね。
お気楽な次男も実は色々と大変なんだから。
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