after short story 5(律side)

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冷蔵庫を物色しながら、考えていた。 俺は名家の御曹司として大切に育てられ、恵まれた環境で生きてきた。欲しいものはすぐ手に入るし、何でも思い通りの人生。 それでも、どんなに恵まれていても、いつも何かが足りないと思ってた。 仕事人間の父は会社にいることがほとんどで、病気がちな母はずっとベッドの上にいて、家族団欒なんて縁のない生活。 今思えば多分寂しかったんだと思う。 今なら分かるけど、あの頃は分からなかった。 だってそんなことにも気付かないくらい、いつも近くに兄がいてくれたから。 胸を張って仲の良い兄弟だとは言えないけど、冷たい兄は俺にだけ優しくて。 だから…今もちょっとだけ寂しいのかもしれない。 兄の優しさを知る人間が増えてしまったことが。 「ちょっと、勝手なことしないで」 俺を追い掛けてキッチンに入ってきたおねーさんが無表情で言えば、再びイラッとした。 …人の気も知らないで。
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