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村田メモ
・その事件は山深い場所にある屋敷で起こった。
屋敷の主である郷田財閥の社長・郷田吉之助がトイレの中で殺害されていたのだ。
夕食を食べようと食堂に集まっていた家族たちだが、吉之助の姿が見当たらない。
別荘にいた者が総出で探していたところ、午後7時27分。離れにある使用人用の屋敷内のトイレで死体となって発見された。
吉之助の首にはひもで絞められたような跡があり、検死の結果、死因は絞殺と判明した。
事件当時、別荘にいたのは使用人と郷田家の人間だけである。
死亡推定時刻はその日の夕方、午後4時から5時ごろと推定された。しかしその時間、長男の武夫は使用人とともに庭の草刈りをしており、長女の真奈美は母の静子とショッピングに出かけていた。
武夫の長男・勇は妻の由紀・息子の耕太とともに映画館へ行っていたため不在だった。
武夫の次男・康雄は自室で書き物をしており、真奈美の娘・春子は居間でテレビを見ていた。
使用人は3人おり、最も年上の矢野幸吉は武夫とともに庭の手入れをしていた。
山下裕子は康雄と真奈美のもとへお茶とお菓子を届けにいき、真奈美と談笑をしている。八神春江は夕飯の支度にとりかかっており、ずっとキッチンにいたという。
人間ではないが敷地内には首輪をつけた猫も数匹いるようだった。
使用人の山下に聞くと、犯行時刻に猫たちが騒いでいたという様子もなかった。
犯行の時間帯に不審な人間を目撃した者はいない。別荘の立地からしても外部犯の犯行とは考えづらく、あたりを隈なく捜索したが、そのような形跡も見当たらなかった。
つまり事件当時、別荘の中にいた人物が犯人である可能性が高いものの、有力な手掛かりがつかめないまま捜査は暗礁に乗り上げつつある。
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