闇はやさしく、その血は甘く

序章

　地図にない村
　よそ者を受け入れない避け地
　特異な暮らしと信仰

　そんな場所なんて、現実にはないと思われるだろうか？
　信じるかどうかはあなたの自由。
　しかし、インターネットで簡単に世界と繋がれる現代でも、そういう「村」は存在している。

　鳴石村という陸の孤島も、そのうちのひとつだ。
　東北地方のとある山の麓にひっそりと、外界の庇護のもと、その村はある。

　そして同じ山のどこかに、もうひとつ、深い森と結界で隠された里があって、そこに住まうのは人ではないという。