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すっごい楽しい。ひかりは応えた。
そう、と母ちゃんが目を細めて頷く。
ずっとずっとこのままやんな。ずっとずっと父ちゃんと母ちゃんとひかりの3人でおれるんやんな。ひかりが言うと、母ちゃんは優しそうな笑いを口許に浮かべたまま、眉を八の字にした。困っている時の顔だ。
ずっとずっとは、ちょっと無理かなぁ。母ちゃんが言った。
そんなん嫌や。ひかりは言った。泣きそうだったけど我慢した。母ちゃんが悲しむから。
父ちゃんが羊と遊び始めた。
父ちゃんはね、ひかりや母ちゃんの事になると頑張り過ぎてまうとこがあるからね。母ちゃんが言った。母ちゃんの長い髪の毛が風で揺れている。
いつも頑張ってお仕事に行っちゃうだろうから、ひかりは寂しいって思う事が多いかもしれないけど、父ちゃんはいつもひかりの事を一番に思ってるから、あんまりわがまま言って困らせたらあかんのよ。
母ちゃんが立ち上がった。
じゃあ、ひかり、母ちゃんもうそろそろ行かなきゃ。
なんで、とひかりは言った。もっと母ちゃんとお話したい。
母ちゃんの眉毛がまた八の字になる。
ひかりは布団の上で跳ね起きた。
隣には布団だけで父ちゃんは居なかった。
あっ、と思い、ひかりは部屋を飛び出した。
雨の音が、聞こえていないのだ。恐る恐る、ひかりは窓の外を見た。
道は濡れている。でも、誰も傘を差している人はいない。雨が、あんなに降っていた雨が止んでしまっていた。
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