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「あぁ……嘘やぁ」
言って、ひかりは窓を開けて灰色の空を見上げた。うらめしや、お空! これは心の中で言った。
「お、おはよう」
父ちゃんの声に振り返る。父ちゃんはもうクリーム色の作業服に着替えていた。
「良かったぁ、雨止んで。これで今月は27日出勤ペースやわ」
がっくり。頭が落ちてしまいそうになるのをひかりはどうにかこうにか我慢した。
父ちゃんを困らせない。昨夜、母ちゃんとそんな約束をしたような気がする。
「ごめんなぁ、ひかり」
玄関で靴の紐を結びながら、父ちゃんが言った。
「ぷよぷよ、また日曜日にやろな」
「うん」
ひかりは言った。もう2年生だ。わがままを言ったりはしない。でも、やっぱり今日は父ちゃんと遊びたかった。父ちゃん、行かんといて、ぷよぷよやろ。ごっくん。口から出かかった言葉を呑み込む。
「父ちゃん行ってらっしゃい。お仕事、頑張ってね」
「おう。できるだけ早よ帰ってくるようにするから。ほな、伊川さんにお願いしてから行ってくるから。ちゃんと伊川さんの言う事聞くんやぞ」
ドアが閉まった後、ひかりは深呼吸をした。窓枠を見ると、ドアが閉まった時の風で逆さまてるてる坊主が揺れていた。
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