よこてる

　ごうごう。ざあざあ。

　昼間はかんかん照りの晴れだったのに、夕方の６時を過ぎてから、窓の外では巨人のいびきみたいな雨の音が聞こえてきた。よし、よし、逆さまてるてる坊主ちゃん、ナイスナイス。窓枠に吊るした逆さまてるてる坊主をひかりは指で突っついた。
雨を降らせたい時はてるてる坊主を逆さまに吊るすと良い。ひかりにそう教えてくれたのは一年生の頃から引き続き担任になった女の先生、作山先生だ。
雷が鳴った。一瞬大きな音が鳴り、びっくりしたが、ひかりは楽しくって仕方なかった。

　テレビの中で気象予報士のおじさんが喋っている。この雨は明日の昼まで続く、と。よっしゃ。ひかりは握った両手のグーを小さく振った。朝から雨なら現場が止まる。つまり、明日は父ちゃんが家に居るのだ。

　夏休みに入って明日で５日目。去年の夏休みは１２日目で大雨が降り、父ちゃんは休みになった。今年は去年より７日早い雨のお休み。いひひひ、いいスタート。
『今日は父ちゃんと沢山遊びました』
今年の夏休みは少なくとも１０回くらい（日曜日はお休みで父ちゃんが家に居るのは当たり前だからそれ以外の日）絵日記にそう書きたい。去年は８回（もちろん日曜日以外）だった。

「うわっ、またひどなってるやん」
お風呂から上がってきた父ちゃんがひかりの頭に手を置いて窓の外をみた。