第1話 ーWeaknessー

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 アコーディオン。リズムを刻む木靴の音。アップテンポなジャズ。妖艶な踊り子。  ホテルからアリーザが出てくる。公衆電話に向かう。  ダイヤルが回る音。ジリリリとコールが鳴る。 「トッド・コールマンです。ただ今留守にしておりますので、お名前とご用件を」 アリーザ「完了したわ」  ガチャンと受話器を置く。公衆電話から離れる。 ○ラオト裏通り(夜)  遠くから聞こえるアコーディオン。木靴の音。アリーザ、淡々と歩く。黒いドレスに固まった血液。薄いピンク色の唇。  そこらを飛び交う怒号。散乱する割れた酒瓶。虚ろな眼の髪の乱れた女。泡を吹いている。燃えるゴミ箱。アリーザ、淡々と歩く。  何かを殴る音。足を止めたアリーザ、音の聞こえた方へ歩く。 ○同・路地 ならず者A「家まで連れてけよ、なあ。なあ!」  蹲る青年。腹を蹴られる。唸り声。 ならず者B「んな高そうなコート着てんだからよぉ? 金持ちなんだろぉ? 俺たちビンボー人に少しくらいわけてもバチはあたらねぇよぉ」  ゲラゲラと笑う。スキレットの酒を呷る。 ならず者A「お前が悪いんだぜ? もっと持ってりゃ家まで行く必要なんざねーんだから。だから早く連れてけよ、おい!」  ならず者Aが胸倉を掴んで青年を起き上がらせる。拳を振りかぶる。     
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